雨戸の向こうの元旦 (鹿園No.153春号)

The Quiet Beginning of a New Year

Early in the morning on New Year’s Day, while it is still dark,
I wake up to the sound of people talking outside.
People gather in the parking space near my house.
I don’t know where they come from, but they come every year at the same time.
I have never met them, and we have never spoken.
Still, from inside my home, I can feel their presence.
That feeling tells me a new year has begun.
Sometimes I think about leaving more space for them.
Sometimes I wish I could offer them something warm to drink.
Even though we have never met,
I feel a quiet connection.
When they leave, I imagine them going their separate ways,
and I gently begin my own New Year’s Day.
A new year always begins in quiet ways.

 

雨戸の向こうの元旦

元旦の早朝、まだ外が薄暗いころから、家の外の方からヒソヒソとした話し声が聞こえてくる。目覚まし時計より少し早く、その声で私は目を覚ます。

雨戸の向こうでは、どこからともなく集まってきた年配の御婦人方が、我が家の駐車場に立って日の出を待っている。

数年前、初めて気がついたときは、正直うるさいなぁと思った。ここは道路ではなく我が家の敷地なのだから。 だが翌年も、その翌年も、元旦の同じ時間になると、同じように人が集まってくる。 気がつけばそれは、私の中でいつの間にか恒例行事になっていた。

道路側に出ると、建物や電線に遮られて日の出がよく見えないらしい。だから皆、少しだけ敷地の中に入ってくる。寒い中、誰かと並んで元旦の朝を迎える時間を楽しみにしている人もいるのだろう。そう思うようになってからは、迷惑だと思う気持ちは少しずつ薄れていった。とはいえ、雨戸を開けるタイミングには毎年迷う。せっかくのおしゃべりを邪魔してしまう気がして、雨戸の後ろで私はウロウロしている。甘酒を差し入れしようか、と考えたこともある。けれど見知らぬ人に踏み込みすぎるのも違う気がして、結局なにもしない。そのかわり、前日、大晦日の夜は駐車場を少し広く空けておく。

今年もまた私は雨戸の前で立ち止まり、外の気配に耳を澄ませる。やがて、日の出とともに、人影は静かに散っていく。 人々が去ったあと、私は台所で甘酒を作り、自分のために一杯飲む。来年は差し入れしようか。それとも今年と同じように雨戸の後ろで迷うだろうか…。そんなことを考えながら、部屋の窓から、私の初日の出を眺めている。

 

 

 

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