ほうき
青い空が広がり、その青が差し込む和室。ザッザという音と共に、細かなほこりをちり取りですくいあげたら、固く絞った雑巾で拭きすすめる。ほんのり畳の香りが広がって、気持ちまでウキウキしてくる。
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一人で生活していた頃のこと、掃除機洗濯機とたて続きに壊れ、しばらく手作業で過ごした。重宝したのはほうきだった。湿らせた新聞紙をちぎり、撒いてほこりが立たないよう絡みとる。同時に床もキレイに拭いてくれる一石二鳥っぷりは、ものぐさな私にピッタリだ。それだけではない、時にはまたがって魔女の宅急便ごっこや、マイクの代わりに持って歌も歌って、一人遊びも退屈しない。
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手作業家事生活になれてくると、機械的な生活音が減るかわり、カラスのおしゃべりや、風に揺られている木々の自然の音が耳に入ってくるようになった。そして何よりも自分の目で、ゴミの量を確認できる。綺麗にしているつもりでも毎日集まる。お菓子の欠片を見つければ、子供の来客があったなぁとか、砂がやたら多いと、庭仕事した靴下のままで家の中にあがったなど、集まったほこりから日々の出来事がわかるからおもしろい。
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今は便利な家電生活だが、先日、ひょんなことから新しい座敷ほうきを譲っていただいた(ひゃっほぉ~)。両手をあげて家に持ち帰り、調子にのってミシンを出して、半分ほど草の部分が隠れるようにカバーを作り、レースまで縫い付けスリスリした。
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陽に焼けた畳の香り、あの時の感覚がよみがえる。手元のほうきがいとおしい。今日は親戚の子と一緒に魔女ごっこをして遊ぼうか。
2021年3月