障子と私 (鹿園 春147号)

子供たちが、パタパタと走り回り、きゃっきゃっと笑い声が響く。静かだった空間が、パァーと明るくなる。

アトリエの障子は、変色しはじめている。そろそろ張り替え時かもしれない。普段できないことをしたら楽しいだろうと、「新しく張替えするから紙を破いて」と教室の子供たちに伝えてみた。 どんな破き方をするのかしらと、のんきに眺めていると、なんと、頭をこすりつけて、ぐりぐりしているではありませんか。(えぇぇー。)ミシミシときしむ音に、焦る私。(折れたら厄介だわ。)慌てて裏に回り戸を支えながら、「こうやって、たくさんの穴をあけてごらん」と紙に向かって指をあて、プスッと開けて見せた。子供たちは穴をのぞきあい、笑いながらまた、頭を押し付けグリグリしている。予想外の行動に笑ってしまった。 そして大きく空いた穴をトンネルごっこと、くぐりぬけている。さすがにおかしくて大笑いした。幼いころの私も、何をしても楽しかったなぁと一緒に破いて遊んだ。

張替えた真っ白な障子。和紙を通る光が優しい。硯を取り出し、墨をする。香木のような香りが広がっていく。 心地よい時間の中で、筆を動かし絵を描いた。 墨絵のおかげで奥行きのある部屋になった。

今日も、子供たちがやってくる。新しくなった障子を見つけたら、何と言うだろうか。 鼻歌を歌いながら、待っている。

 

 

天までとどけ画集・仏様と童子が鯉のぼりに乗っている表紙絵

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