削り器 (鹿園 秋146号)

削り器

値札を付けたままの鰹節削り器を譲り受けた。刃は錆びついていたが、袋に入っていたので新品同様。以前、はさみ研ぎでお世話になった店を思い出し、助手席に削り器を座らせ、車で向かった。

店に入ると職人さんが使う専門のお道具たちが順番待ちであろう、新聞にくるまれた刃物が無造作に置かれていた。「ごめんくださーい」の声を聞いた店主が出てくる。私の事情説明を一通り聞くと、一般向けと職人用の違いを話し始めた。そして「良い釘は手に入らなくなった」とか「今の釘で修理すると、飛び出てきてしまって危ない」など、修理に欠かせない釘の話になった。店主は古い建物から出てくる釘を集め、鍛えなおして使うという。今時そんな人がいるんだと驚いた。今は便利になりすぎて、上等な道具やパーツが少ないのだろう。そんなことを考えていたら、店主から私の手のひらに四角い釘が渡された。青光りするお手製の釘。ぬくもりのある味わいは感動ものだ。さらにプロの料理人が使う削り器も見せてくれた。大工さんが使う大きなカンナのように、どっしりとしたものだった。店主のこだわりの話でカンゲキがいっぱいの一日にとなった。 修理完了の連絡を受け、スーパーで買ったかつおぶしを握りしめて迎えに行くと、余分なパーツは除かれ、スムーズに動かせるようになっている。薄く削り直され、新しい木肌からはほのかに香りが漂ってくる。店主は私が持ち込んだかつおぶしをその場で削ってくれた。道具の切れ味とかつおぶしの香りに心が躍った。

台所に立ち、教えられた通り少し温めたかつおぶしを削る。ズケー、ズケーと、音を出しながら、香ばしさが広がっていく。カットした豆腐、わかめを具材に味噌汁を作る。赤いお椀から白い湯気が上がっている。両手に持ってひと口「こくん」。ワンランクアップした、だしのうま味が体に沁み渡っていく。何だか、ほっと優しい気持ちになった。 またひとつ、お気に入りの道具が増えた。

天までとどけ画集・仏様と童子が鯉のぼりに乗っている表紙絵

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