菜の花

殺風景だった街に、日差しが暖かくなる頃、色づきはじめた草花。   小さな花が集まり黄色い彩りを添えてくれる菜の花。昨日つぼみだった花が開き、太陽を浴びながら風に揺れている。

菜の花畑の中でかくれんぼして、青臭い匂いに堪えられず見つかってしまった子供の頃、オレンジ色の空になると高台へ向かい、陽が沈むときの色の変化を眺めていた。大人になった今でも、夕方の空は魅力的だ。

おひたしが食べたいがために菜の花畑へいそいそと出掛ける。家の外でイタズラして騒いでいる親戚の子供達。飛びはねて遊ぶことはもうなくなったが、変わらないのは食いしん坊の私。             子供の声と和らいだ陽の光を感じながらの散歩も楽しい。一面の菜の花を目の前に自然と口ずさむ歌がある。

童謡の「おぼろづきよ」だ。

小学校の音楽の時間で学んだ当時の私は意味が解らず、お弁当のおかずのそぼろのことだと思っていた。理解できる年齢になった時、勘違いしていた自分が情けなかったが、いつのまにか美しい情景を想像できるようになっている。口ずさむ度、歌詞に心動かされている。

湯がいた緑鮮やかなおひたしを頬張る。

今年も淡い香りとともに春のおとずれを味わっている。

 

2017年3月

天までとどけ画集・仏様と童子が鯉のぼりに乗っている表紙絵

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