おべんとう (鹿野山 鹿園ろくおん春号137号)

おべんとう

あたたかくなってくると、公園でシートを広げている子供たちを見かけるようになる。男の子たちはおにぎりを手に走り、女の子たちはかわいらしい笑顔が並んでいる。青空の下では、普段と違う味がするのだろう。

幼稚園の初めての遠足を思い出す。40分ほどの川原まで歩くだけなのに、その日が待ち遠しかった。母が作るお弁当も楽しみで、何日も前からワクワク嬉しくなっていた。

出発の当日、母は寝坊する。弁当を作るどころか、今から行っても間に合わない。ショックで大泣きする私、車に私を放り込む母。途中でパンを買ってかばんに突っ込み、あっという間に園に到着した。すでに先生も生徒もいない。園長先生は、水筒を持たない私を察して、湯飲み茶碗を渡してくれた。私が川原についたころ、みんなはお弁当を広げ、おかずの見せっこをしながら食べている。車から降りる私は注目の的となり、はずかしくて、隅っこに座って、パンをかじった。借りてきた湯飲み茶碗に先生が牛乳を注いでくれた。

マーガリンが塗ってあるシュガーパンと、青地に白の水玉の湯飲み茶碗、そして黄色い帽子。かばんで隠しながらパンをかじる私が、あの日の写真にいる。寝坊の記憶の味がする私のお気に入りのパン。どんなお弁当も思い出になるんだなぁと思う。

今日の公園にだってあの日の私がいるかもしれないと思うと、ニンマリしてしまう。

 

2018年3月

天までとどけ画集・仏様と童子が鯉のぼりに乗っている表紙絵

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